2025.04.11
認知バイアス!? 完全版グルテンフリーダイエット

KONDOです。
今回の記事はグルテンフリーダイエット
についての補足とまとめ
=完全版となります。
過去記事
過去記事では、
グルテンフリーダイエットをセリアック病や
グルテン過敏症、アレルギーでない人は
特に実施しても無意味だよ
ということを示して参りました。
又、「グルテンフリーにしたら痩せた」
というちょくちょく聞く感想文についても
グルテンフリーにした直接的な恩恵ではなく
別の交絡因子による影響によるもので
説明がつくと示して参りました。
なんせこれらに明確なエビデンスが存在せず
現状グルテンフリーダイエットを
先述の病気等に該当しない健常者が
実施するメリットに根拠がありません。
セリアック病
セリアック病は簡単にいうと
小麦や大麦、ライ麦に含まれるグルテン
というタンパク質に対して、
体の免疫システムが異常に反応してしまう病気です。
細菌やウイルスなどの外敵から守るための
免疫システムがありますが、
セリアック病の人の場合、この免疫がグルテンを
「敵」と勘違いして攻撃してし、その結果、
小腸の内側にある絨毛(じゅうもう)という
栄養を吸収するための細かい突起が傷つき、
小腸の絨毛がダメージを受けると
食べ物から必要な栄養をうまく吸収できなくなります。
そのため、下痢や便秘、ガスがたまるといった
お腹の不調が起こります。
また、栄養が不足することで体重が減ったり、
エネルギー不足から疲れやすさを感じたり、
鉄分やカルシウムの不足によって
貧血や骨のもろさを引き起こしたりすることもあります。
皮膚に湿疹が出るケースや、
集中力が低下したり気分が不安定になったりする
精神的な影響が現れることも少なくありません。
このセリアック病の有病率は
世界的に見ると約1%と言われています。
パン等の小麦製品が主食となっている
国では比較的多い傾向となっておりますが
世界的に見るとかなり少ないことがわかります。
参考文献
Management of Inflammatory Bowel Diseases in Special Populations: Obese, Old, or Obstetric
そして日本におけるセリアック病の
有病率は0.05%とされており、
セリアック病に似た病気として
小麦アレルギーがありますが
こちらも日本人だと約0.2%と
極めて低い数値だと分かります。
グルテン過敏症
セリアック病の診断として
十二指腸・小腸の一部を採取・評価や
抗体検査がありますが、
これらの検査でセリアック病と
診断が下されないものの
グルテンを摂取すると体調不良を
訴える人が居ます。
それを非セリアック・グルテン過敏症と言います。
おそらく馬鹿発見フィールドであるによく書かれている
InstagramやThreads
「日本人はグルテンに合わない」
「そもそも日本人は主食が小麦じゃないから」
的な文言やグルテンをやめたら体調良好だとか
そういう類はこれらから派生していると思いますが
この非セリアック・グルテン過敏症も
世界的に見ても約1.7%-13%とされています。
ちなみに機序等は不明です。
ただこれのバイオマーカーは存在せず
自覚症状での診断や調査が主なので
明確な診断基準が確立していません。
参考文献
Celiac disease in non-clinical populations of Japan
Food-dependent exercise-induced anaphylaxis -importance of omega-5 gliadin and HMW-glutenin as causative antigens for wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis-
このグルテン過敏症に対して
面白い研究があります。
グルテン含有食と
グルテンフリー食(プラセボ)の2群で
食べる順番等もランダムにした
二重盲検比較試験のもので
グルテン過敏症と自覚している参加者
231名のうちの16%に当たる38名だけが
グルテン含有食を食べた時に症状の悪化を
訴えとする研究です。
そして逆にグルテン含有色ではなく
プラセボの方を食べた時に
症状が現れたまたは悪化したとした
参加者は40%であったと報告されています。
つまるところ
グルテン過敏症と自覚している人の
体調不良等は実際のところは
グルテンによる影響ではないという
可能性が示唆されています。
参考文献:Suspected Nonceliac Gluten Sensitivity Confirmed in Few Patients After Gluten Challenge in Double-Blind, Placebo-Controlled Trial
ノセボ効果
「ノセボ効果」というものをご存知でしょうか。
プラセボ効果はよくご存知かと思いますが
どちらも病は気からを体現している様なものです。
プラセボ効果の方は
「良いことが起こる(ある)かもしれない」
という様な期待でポジティブな思い込みから
本当に良い影響が出ているように感じる効果で、
ノセボ効果は正反対となり、
「悪いことが起こる(ある)かもしれない」
という様なネガティブな思い込みから
本当に悪影響が出ているように感じる効果です。
先述の研究を例にすると、
グルテン過敏症と自覚している人の大多数が
小麦及びグルテンに対してのノセボ効果が
普段から発動している可能性が高いと
示唆されているということです。
確かに昨今は小麦製品やグルテンに対して
過剰なまでのマイナスイメージが布教されています。
どの発信においても実体験ベースのただの感想で
エビデンスとして用いるには非常に脆弱な
根拠を盾にして色々騒がしく普及されている方が
一部ですがいらっしゃいます。
「小麦製品をやめたら痩せた」
→例えばうどんやラーメン、パンを控えれば
比較的カロリーの摂りやすい食品を
避けている状態となり単なるエネルギー収支の
マイナスが生じたため痩せた
「小麦製品をやめたら体調が良い」
→麺類やパン類などを控えて別の食材に
置き換わったことで栄養素の摂取が
限定的でなくなり多種多様な栄養素の
摂取に切り替わった可能性がある
などさまざまな交絡因子が存在しており、
加えて小麦やグルテンに対する
ネガティブイメージがノセボ効果を生み
ダブルパンチとなってこんなに広まっている
といった流れであると考えています。
「日本人の主食は小麦じゃないから
日本人の体質にはグルテンは合わない」といった
言説には何の根拠もなく非常に愚かな思考なので
聞く耳を持つ必要はありません。
花粉や黄砂の季節になると
「小麦をやめたら花粉症が治った」
などと言われる方がいらっしゃいますが
これらもエビデンスは現状無いかと思われます。
単なる個人の感想程度なものです。
消化のし辛いグルテンが
先述の通り免疫系を刺激して・・・とか
腸内環境を悪化させて・・・とか
それっぽい機序は思いつくのでしょうが
明確な根拠たらしいものは無さげです。
このくらいならありそうなのにね。
グルテンフリーとパフォーマンス
ではそんなネガティブイメージが
なぜ普及してしまったのか。
それはセリアック病であるテニスプレーヤーの
トップランカーであるジョコビッチ選手の
書籍がリリースされ、そこに書かれている内容として
「グルテンフリーにしたおかげで頂点に上り詰めた・」
的な感じの書かれ方をしており
それが広まり一部のスポーツ選手やタレントなどが
取り沙汰し、広まったと推察されています。
セリアック病の人が食事内容を
グルテンフリーにすることは
ただの当たり前にメリットが生じやすい方法で
パフォーマンスが上がることは十分に考えられますが
非セリアック病の人たちつまりは健常者なら
グルテンフリー食を実施してパフォーマンスが上がるか?
といった疑問が浮かびます。
非セリアック病の自転車競技者13名に対して
グルテンフリー食とグルテン含有食を
1週間ずつそれぞれ摂取させのちに
パフォーマンステストを行なった実験で
結果として胃腸の不調やパフォーマンステストの結果に
優位差が全く無かったと示されています。
参考文献:Dietary Practices Adopted by Track-and-Field Athletes: Gluten-Free, Low FODMAP, Vegetarian, and Fasting
1週間ずつ、それぞれの試行も1週間間を開けて
実施されているものですから
もう少し長期にわたる研究が出てくることを待ちましょう。
胃腸の不調系は割とすぐに感じそうですけどね。
まとめ
いわゆる認知バイアスである
利用可能性ヒューリスティックです。
医学的・科学的に証明されていることよりも
有名人や周りの人の経験談や美談を鵜呑みにし
判断してしまうことを指します。
よくあるじゃないですか。
「これを飲めば(やれば)癌が治る」的な
民間療法ぽい変なものに手を出して
最終的に治らず手遅れになっちゃう人。
グルテンについても健常者については
特に気にしなくて良いです。
自分がグルテン過敏症だと思うなら
避けてください。ただ特に考えているほど
メリットは別にないですので
周りに変な布教しない様にしましょう。
交絡因子がてんこ盛りですので。
基本的には非セリアック・プラセボ過敏症
という様な”プラセボ過敏症”という
いい感じなネーミングが冠されますよ。
とかく”現状は”明確な根拠はありません。
もしかしたらこの先に出るかもしれませんが
現状はないです。