2025.03.29
減量中にL-カルニチン必要?コーチングQ&A

こんにちはTOMOAKIです。
競技力の維持や向上を目指すアスリートの中には、
体脂肪率がすでに低い状態から、
体重や体組成をさらに最適化したいと考える方も多くいらっしゃいます。
先日、あるクライアントさんからこのような相談を受けました。
「これまでカルニチンを摂取していましたが、
最近切らしてしまいました。再購入すべきでしょうか?
それとも、もう取らなくてもいいでしょうか?」
サプリメントの中でも特に「脂肪燃焼」や「エネルギー代謝」に
関連するとされるL-カルニチンは、多くのアスリートにとって興味深い成分かもしれません。
しかし、実際にどのような効果があるのか、
どのような条件下で有効なのかは、
しっかりとした科学的根拠に基づいて判断する必要があります。
本記事では、37件のランダム化比較試験(RCT)を対象とした
2020年のメタアナリシスの結果に基づき、
L-カルニチンと体重・体脂肪に関する関係性について、
信頼できる情報をわかりやすく整理してご紹介いたします。
L-カルニチンとは?
L-カルニチンは、体内、
特に肝臓や腎臓で自然に作られている物質です。
これはアミノ酸(たんぱく質を構成する成分)の一種から合成される、
「ビタミンのような働き」を持つ成分とされています。
L-カルニチンの主な役割は、
脂肪酸をエネルギーに変えるサポートをすることです。
もう少し具体的に言うと、脂肪酸を細胞内にある
「ミトコンドリア」と呼ばれる小さなエネルギー工場に運び、
そこでエネルギーとして燃やす手助けをします。
この働きにより、体脂肪の代謝を助けるとされているため、
サプリメントとしては「脂肪燃焼をサポートする成分」として広く認識されています。
ただし、これはあくまで脂肪酸の代謝を補助する機能があるということであり、
L-カルニチンそのものが直接体脂肪を減らすと断言することはできません。
また、L-カルニチンは、エネルギー産生や酸化ストレスの調節、
糖代謝などにも関わっているとされ、
これらの働きが肥満や体重管理への
間接的な影響に結びつく可能性もあると報告されています。
研究デザインと対象
L-カルニチンの補給が体重と体組成に与える影響を評価するために、
37件のRCT(総計2292人の参加者)を対象にした
メタアナリシスが実施されました。RCT(ランダム化比較試験)とは、
科学研究の中でも特に信頼性が高い方法のひとつで、
参加者を無作為に「L-カルニチンを摂取するグループ」と
「摂取しないグループ(または偽薬を摂取するグループ)」に
分けて比較する研究手法です。これにより、L-カルニチンそのものの効果をより正確に評価することができます。
このメタアナリシスでは、
体重、BMI(体格指数)、体脂肪量、腹囲、体脂肪率といった項目が評価されており、
それぞれの指標におけるL-カルニチンの影響が統計的に検討されました。
主な結果
メタアナリシスの結果、以下のような効果が示されました。
- 体重:L-カルニチン補給群は、対照群に比べて
平均して1.21 kgの体重減少が見られました(95%信頼区間:-1.73, -0.68;P < 0.001)。 - BMI:平均して0.24 kg/m²の減少が認められました(P = 0.001)。
- 体脂肪量:2.08 kgの有意な減少が示されました(P = 0.003)。
- 腹囲および体脂肪率については、統計的に有意な変化は観察されませんでした。
投与量と効果の関係
非線形の用量反応関係が認められ、
1日あたり2000mgのL-カルニチン摂取が
最も高い体重減少効果を示しました。
なお、BMI、腹囲、体脂肪率に関しては、
この用量反応関係は確認されませんでした。
特定の条件での効果
- 過体重・肥満者においては、L-カルニチンの補給による
体重の有意な減少が観察されました。 - 正常体重者には顕著な変化は見られませんでした。
- 高品質RCTのみを対象とした解析でも、
体重減少効果は確認されました。
有効性の限界と補足情報
本研究では、L-カルニチンの効果は「控えめ」な減少効果であると表現されており、
その大きさはおおよそ1〜1.5kg程度です。
また、L-カルニチン単独よりも、
食事療法や運動療法と併用した場合に
より効果的である可能性が示唆されました。
推奨事項と注意事項
体重減少目的におけるL-カルニチンの補給は、
過体重または肥満の成人において、
最大2000mg/日を目安に補給することで効果が期待できるとされています。
ただし、長期的な安全性、他の介入との相互作用、
個人差に関する詳細な研究が今後も必要です。
注意事項としては軽微な副作用(吐き気、胃の不快感など)や、
トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)生成の懸念が報告されているため、
サプリメントの継続的な摂取には慎重な判断が求められます。
まとめ
今回取り上げた大規模なシステマティックレビューおよび
メタアナリシスによれば、L-カルニチンの補給は、
過体重や肥満の成人において、
体重や体脂肪量をわずかに減少させる可能性が示されています。
しかしその効果は、言い換えれば「穏やかな変化」にとどまっており、
劇的な変化を期待できるものではありません。
一方で、冒頭で触れたようなすでに体脂肪率が低い女性競技者にとって、
L-カルニチンがさらなる減量効果をもたらすという明確な根拠は、
今回の分析からは確認されていません。
今回のデータを踏まえると、L-カルニチンは状況によっては
過剰に期待されすぎている面があるとも言えるかもしれません。
つまり、「再購入すべきか?」という問いに対して、
科学的に見る限り、必ずしも必要とは言い難いというのが正直なところです。
特に、すでに肥満でなく、代謝的にも健康であれば、
L-カルニチンをサプリメントとして補うよりも、
日々の食事内容やトレーニング計画の質を見直すことの方が、
よほど実質的かつ効果的だと考えられます。
もし継続使用を検討される場合は、
まず自身の体の状態や目標を見直し、
必要性が本当にあるのかどうかを一歩立ち止まって考えてみる
ことをおすすめいたします。
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