マシンヒップアブダクションについて

みなさまこんにちは。
パーソナルトレーナーの亀山です。
今回は、マシンヒップアブダクション(MHA)についての
個人的に考察して記事にしていこうと思います。

MHAは基本的にヒップアップの種目として、
特に初心者が手を出しやすいヒップアップ種目として、
24Hジムなどでも目にする機会が多いかなと思います。
ただ、ヒップアップと言っても、
大きくは2つ。大臀筋と中殿筋どちらかになり、
MHAは”中殿筋”を鍛えるマシンです。
筋トレのマシンというのは基本的には、
1つの動きに着目して作られており、
応用は出来ても、あくまで応用です。

MHAのメインの動きはというと、
股関節屈曲・膝関節屈曲状態での外転運動になります。
中殿筋の作用は筋全体として外転の作用を持ちます。
なので、「MHAは中殿筋で合っている」とわけなのですが、
中殿筋と言っても前部・中部・後部と
大胸筋のように繊維方向があり、
”中殿筋”だけではまだ曖昧です。
筋肉は基本的に肢位に応じて筋作用が変化していき、
股関節のように複雑に動く部分では尚の事になります。
その変化は筋作用の逆転が起こるほどです。

では、中殿筋について詳しく知っていこうと思います。

股関節内転10度において中殿筋が至適長であり、
股関節外転0度において、中殿筋は至適筋長よりも短縮していることが考えられる。

これに加えて、股関節屈曲角度が増加するにしたがい、
筋長がさらに短縮するため股関節外転運動に対する筋の効率が低下し、
その結果として、筋活動量も低下したと考えられる。

股関節肢位の違いによる股関節外転筋群の筋電図学的解析

股関節の屈曲角度の増加で中殿筋は筋活動が低下します。
中殿筋前部繊維と似た筋走行をする
大腿筋膜張筋においては股関節屈曲角度の増加においての
筋活動低下は見られないとの報告があります。
ただし、膝関節屈曲角度は影響を与えます。

大腿筋膜張筋の筋長は、膝関節完全伸展位から屈曲30°~40°程度までは延長し、
そこから完全屈曲位まで短縮していくとされる。
90°屈曲位や完全屈曲位では大腿筋膜張筋は短縮位で、
短縮位からの収縮は筋出力を得にくいため、有意に小さい%iEMGを示したと考えられる。

膝関節角度の相違が股関節外転運動時の大腿筋膜張筋活動へ与える影響
―大腿筋膜張筋と中殿筋の筋電積分値による検討―

MHAのように座位で膝関節を曲げておこう動作では、
股関節の影響は受けずとも、膝関節から影響を受ける形になり、
大腿筋膜張筋は筋出力が得られなくなります。
膝を曲げて行う動作は中殿筋を選択的に動作する上では
理に適った事の様です。

中殿筋中部線維および後部線維では、
股関節屈曲肢位の変化による筋活動量の明らかな違いはみられなかった。
中殿筋中部線維および後部線維は、前部線維より後方に位置するため、
前部線維に比べて股関節屈曲肢位の変化にともなう外転方向への
分力の低下や、筋長の変化が少ないと推察できる。

股関節肢位の違いによる股関節外転筋群の筋電図学的解析

つまり、MHAにおける対象筋を絞って考えると、
中殿筋中部・後部繊維であると思われます。

中殿筋中・後部線維は、
大腿骨中間位、最大内旋位での活動は高く、
外旋位では活動量が低下してしまいます。
その理由は、外旋するほど股関節屈曲筋が
外転筋として作用し始める事が原因になってきます。


つまり、MHAにおいて外転運動で
中殿筋中・後部繊維を動かすためには、
大腿骨中間位が一番望ましくなり、
膝のパッドの真下に足置きが来るのは
構造的に理に適っていますね。

MHAは股関節屈曲位を作り、
あとは大腿骨中間位で外転する。
ただそれだけのマシン。簡単ですね。
前述のような身体の肢位や動かし方を
ミスらなければ別にそこまで変な事にはなりませんが、
これを理解せずにやれば女性においては嫌な
股関節屈曲筋、大腿四頭筋を育てるマシンに
変化してしまうわけです。

では、ここからはよくあるエラーについて
考えていきましょう。
当ジムMHAとか置いてないので、
MHAと同じように傾斜ついてる
レッグEXに座った画像で想像してみてください。

本来、MHAは背もたれがありますが、
海外マシンは大きくそこまで深く座れない場合もあり、
場合によって上画像のような姿勢になってしまう事もあります。
背もたれを使う・使わないはどちらでもいいのですが、
骨盤後傾が入ることが個人的には最大のエラーとなります。
この座位姿勢において、骨盤後傾をすれば
下行性運動連鎖により、大腿骨外旋します。

プラスで身体の前側に手置いてたり、
下向いてたら尚、よくないですね。
それも骨盤後傾を起こしやすくなる要因です。

大腿骨外旋で、股関節外転したらどうなるか?
前述の通りです。
股関節屈曲筋が働き、中殿筋が動きにくくなってしまいます。
これは特に気を付けていただきたいエラーです。


トレーニング歴長い選手や、
身体の感覚しっかりしている人ならば、
そこまで悪化したフォームにはなりませんが、
意外にも”パーソナルジム”だとこういったエラーになりやすさがあります。
トレーナーに知識がない場合、
”ただ脚を開かせるだけ”になってしまい、
このようなエラーを起こしてしまう場合もあります。
そういうトレーナーは、自分自身を過信し、
お客さんの感覚がどう出ているかなども
聞かなかったりもするので、改善の見込みはありませんが。


ここまでは一般的な座位での解説になりますが
ここからはトレーニーが行う、お尻上げて前傾気味で行う
MHAについて少し考えてみようと思います。
では、こちらの論文を見てみてください。

ここで注目していただきたいのが、
大臀筋下部繊維の筋活動が、
股関節90°屈曲・股関節外転運動において
筋活動が有意に上昇しています。

これが女性の海外選手でもやっている人が多い、
お尻を浮かせ前傾気味にMHAをやっている理由だと思います。
ヒップアップは大臀筋と中殿筋と前述しましたので理に適っていますね。
ちなみにですが、股関節外転運動時には
大臀筋上部繊維も活動が見られますが、
こちらはあくまで股関節の安定性に寄与しているものと
思われるので”アブダクションの動きで鍛える”とは
別物と考えていただきたいです。

お尻の上の方にも効いてるって意見があれば
たぶん反ってるだけなので注意した方がいいです。
あんまり望ましくない刺激の出方ですので。

ここで1つ疑問が出てきます。
座位で行うMHAも、お尻を上げて行うMHAも
同じように股関節屈曲筋90°、外転運動なら
同じように刺激が入るのか?という疑問です。

答えはNoです。
座位では自身の体重で物理的に
臀筋の可動が制限されている状態になるからです。
筋肉は外的な力で抑えると収縮がかかりにくくなります。

おおよそ50mmHgよりも強い圧迫時には、単収縮力が低下するようである。

骨格筋に対する圧迫と 運動パフォーマンスの関連性に関する統合的研究


シートに座っているお尻、つまり大臀筋は
抑えられている状態になるため、
動きたくとも動けなくなっており、
座位かお尻を上げてだと動きが変わるのです。
なので、トレーニング歴のある選手などが
お尻上げたりなどやっていくのも分かります。
ただ、お尻を上げると膝関節の屈曲角度が小さくなり、
大腿筋膜張筋も動きやすくなります。

このようにマシンヒップアブダクションは、
初心者が簡単にヒップアップしやすくなるマシンでも、
ただ、脚を広げるだけのマシンでもないわけなので、
中々に難しさがあるかなと思います。


だいぶ長くなってしまったので
ここで一度区切ります。
ちなみにですが、私は必要ないと考えているので、
ほとんどこのマシンやったことないんですよね。
トモアキ君にMHAの動画を撮ってきてもらうぐらいには
記憶にないマシンになります。
なので、あくまで動作を見たうえでの
”ただの考察”ぐらいに思っておいてください。

過去おすすめ記事

この記事を書いた人

アバター画像

KAMEYAMA

パーソナルトレーナー
NSCA-CPT

ボディメイクを目的に元々トレーニングしてきましたが2020年よりパワーリフティング競技者となるべく自身のスタイルが変わりました。指導内容は解剖学に適切に沿いながらレベルを問わず基礎基本を丁寧に、そして応用やパワーのテクニックを加えて指導します。ボディメイク指導が最も得意としていますが今後はパワーリフティングの指導もできるように精進します。