糖尿病・食事療法・運動療法について

こんにちはTOMOAKIです。
今日は糖尿病について文献等を基に紹介していきます。

糖尿病について

血糖値とインスリンの関係

糖尿病についての話をする前に
まずは糖尿病と密接な関係にある
血糖値とインスリンの関係について紹介します。

糖分を含む食べ物は体内でブドウ糖に分解されます。
ブドウ糖は小腸から血液中へと吸収されます。
血液中のブドウ糖のことを血糖
血糖の濃度のことを血糖値
と言います。

血中のブドウ糖は必要に応じて細胞へと取り込まれエネルギー源となります。
このブドウ糖を細胞に取り込む際に重要なのがインスリンというホルモンです。
食後血糖値が上がると膵臓のランゲルハンス島のβ細胞というところから
インスリンが血液中へと分泌されます。

血液中に分泌されたインスリンは肝臓、筋肉など
全身の細胞の表面にあるインスリン受容体に結合します。
インスリンが細胞の受容体に結合することで
チロシンキナーゼという酵素が活性化されて
細胞膜の透過性が高まり、糖が細胞内に入りやすくなります。 

このようにして肝臓、脂肪組織、筋肉などに取り込まれエネルギー源となり、
余ったブドウ糖は、中性脂肪、グリコーゲンなどに姿を変えて、
肝臓、脂肪組織、筋肉に貯めこまれます。

これらの貯め込まれた中性脂肪やグリコーゲンは、
食事をしていないときや、運動をするときなど、
必要になったときに使われるのです。

このように食後上がった血糖値はインスリンの働きもあり
血中のブドウ糖が細胞に取り込まれ
血中のブドウ糖の量、濃度が下がり
言い換えると血糖値が下がります。

インスリンの作用の図
https://yamamotonaika.net/disease/dm/insulin.html

糖尿病とは

糖尿病とは,インスリンの作用の不足に基づく慢性の
高血糖状態を主徴とする代謝疾患群です。

引用元:糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告

血糖値を下げる唯一のホルモンはインスリンであり、
血糖値を上げるホルモンはたくさんありますが
インスリンを始めとする様々なホルモンによって
通常は血液中の糖の濃度は一定に保たれています。
(空腹時血糖値は70 ~ 109 mg/dL、食後概ね140 mg/dL未満)

しかしインスリンの分泌量や作用が不足すると
食後に血糖値が十分に下がらず高血糖状態となります。
それにより糖、脂質、蛋白質を含むほとんどすべての代謝系
に異常を来すのが糖尿病の特徴です。

糖尿病の症状

糖尿病は、慢性的な高血糖状態を特徴としており、
多尿→口渇→多飲でしばしば多食であるにもかかわらず、
ケトーシス、アシドーシス、体重減少などの症状を伴い、
治療をしないと昏睡や死に至ります。

また怖いのが合併症です。
次に合併症について紹介していきます。

糖尿病の合併症

糖尿病の合併症は下記の二つに大きく分類されます。
・極小血管障害
・大血管障害

細い血管の障害から起こることが多いと言われています。

細い血管が傷つき起こる病気は
糖尿病の3大合併症と言われ
手足の痺れや感覚が鈍るなどの症状がみられる
糖尿病性神経障害」、
目の中の血管が傷つき視力が落ちる
糖尿病性網膜症」、
腎臓の働きが悪くなる
糖尿病性腎症」があります。

太い血管の病気には「閉塞性動脈硬化症(足壊疽など)」、
「脳梗塞」や「虚血性心疾患」などがあります。

糖尿病の分類

糖尿病は1型、2型、その他の特定の機序・疾患によるもの、
妊娠糖尿病があります。

1型糖尿病

インスリンは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されます。
1型糖尿病はそのβ細胞が、破壊のため血中インスリンが
絶対的に欠乏した状態です。

1型糖尿病と診断されたら、治療にインスリン製剤を使います。
世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病と言われています。
若い方を中心に幅広い年齢で発症し、
生活習慣が関わる2型糖尿病と違い自己免疫などが成因で、治療が大きく異なります。

2型糖尿病

2型糖尿病は、インスリンの分泌量が低下したり(インスリンの分泌低下)、
インスリンが作用しにくくなったり(インスリン抵抗性)することによって
血糖値が高くなります。

この場合のインスリンの分泌低下は膵島の破壊によるものではなく、
グルコース刺激に対する分泌障害などであり、
基礎分泌はかえって高い場合もあります。

2型糖尿病となる原因は、遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、
肥満などの環境的な影響
があるといわれています。

その他の特定の機序、疾患によるもの

その他の特定の機序、疾患によるものは
糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇し、
糖尿病を発症することがあります。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めてわかった、
まだ糖尿病には至っていない血糖の上昇をいいます。

糖は赤ちゃんの栄養となるので、
多すぎても少なすぎても成長に影響を及ぼすことがあります。
そのため、お腹の赤ちゃんに十分な栄養を与えながら、
細やかな血糖管理をすることが大切です。

妊娠中は絶えず赤ちゃんに栄養を与えているため、
お腹が空いているときの血糖値は、妊娠していないときと比べて低くなります。

一方で、胎盤からでるホルモンの影響で
インスリンが効きにくくなり、食後の血糖値は上がりやすくなります。

多くの場合、高い血糖値は出産のあとに戻りますが、
妊娠糖尿病を経験した方は将来糖尿病になりやすいといわれています。

参考画像
糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告より

糖尿病の治療

糖尿病治療の目標は、
高血糖が原因で起こる代謝異常を改善すること
糖尿病に特徴的な合併症などの更なる悪化を防ぐこと
健康な人と変わらない生活の質を保ち、
寿命を全うすること
にあります。

糖尿病の治療には、運動療法・食事療法・薬物療法があります。
糖尿病の種類や程度により治療法は異なりますが
今回は2型糖尿病(インスリン非依存状態)の治療を紹介していきます。

下図のフローチャートからも分かる通り
どの段階においても食事療法・運動療法・糖尿病教育が
必須となっております。

・治療→検査→血糖コントロール目標を達成→治療を継続
・検査→目標未達成→血糖降下薬やインスリン療法などが加わり
目標達成できれば継続、未達成なら更なる薬の増量や併用療法へと進みます。

今回は治療の中でもどのフェーズでも重要な
食事療法と運動療法について紹介していきいます。

2 型糖尿病:インスリン非依存状態の治療 糖尿病診療ガイドライン2019より

食事療法

2型糖尿病による食事療法では総摂取エネルギー量を適正に保つこと
食事と密接な関係にあるインスリン分泌低下やインスリン抵抗性を改善し
肥満の場合は肥満の解消をして高血糖の状態を防ぐこと、
さらには高血糖が続くことによる
合併症などを予防かつ進みを抑制することを目的としています。

そのためには摂取する食べ物の量を調整したり
各種の栄養素が不足しないようにバランスの良い食事が必要です。
偏った食生活を内容、量ともに個人にあったものに整えるというイメージです。

目標総摂取エネルギー量

目標総摂取エネルギー量は個人や病態によって異なりますが
あくまで初期設定としてよく用いられる
目標体重をベースに設定するやり方を紹介します。

①目標体重の算出(kg)
65 歳未満:[身長(m)]^2×22
65 歳から 74 歳:[身長(m)]^2×22~25
75 歳以上:[身長(m)]^2×22~25

②身体活動と病態によるエネルギー係数の算出(kcal/kg)
・軽い労作(大部分が座位の静的活動):25~30
・普通の労作(座位中心だが通勤・家事,軽い運動を含む):30~35
・重い労作(力仕事,活発な運動習慣がある):35~

③目標総摂取エネルギー量の算出(kcal/day)
目標体重(kg)×エネルギー係数(kcal/kg)

仮に40代170cm、軽い労作の場合
①1.7*1.7*22=63.58kg
②25~30(kcal/kg)
③63.58*25=1,589kcal
 63.58*30=1,907kcal

このように1,589kcal~1,907kcal程度を
初期の目標摂取エネルギー量とする。
(肥満で減量をはかる場合はエネルギー係数は
低めの1,589kcalに近い値を用いる。)

三大栄養素の割合

糖尿病の予防・管理のための望ましい
三大栄養素の割合を設定する明確なエビデンスはないため
その人の身体活動量、合併症の状態、年齢、
食の嗜好などに応じて、柔軟に対処する必要があります。

2013 年に出された「日本糖尿病学会の食事療法に関する提言」より、
三大栄養素の割合としては
・炭水化物50~60%
・タンパク質 20%以下を目安
・のこりを脂質

例えば目標摂取エネルギー量が1,589kcalであれば
初期の設定としてはこれくらいとなります。

炭水化物:198g~238g (50~60%)
たんぱく質:80g程度 (20%)
脂質:53g~35g (30%~20%)

炭水化物摂取

炭水化物摂取量と糖尿病の発症リスク、
糖尿病の管理状態との関連性は確認されていません。

純粋果糖(果物)は一定量までは糖尿病に影響を与えないため、
80kcal程=糖質量20g程の摂取は問題ないようです。

ショ糖を含んだ甘味やジュースは、血糖コントロールの悪化、
メタボリックシンドロームの助長を招く可能性があり、
控えるべきでとのことです。

食物繊維は糖尿病状態の改善に有効であり、
炭水化物摂取量とは無関係に20g/日以上の摂取が推奨されています。

炭水化物は抜くのではなく適量食べつつ
なるべく食物繊維の豊富なものを選ぶと良いです。

たんぱく質摂取

タンパク質の摂取量は、糖尿病(性)腎症の
発症リスクとはならないです。
しかし20%を超えるタンパク質摂取は、
動脈硬化性疾患などによる総死亡率の増加を
きたす可能性があり、長期的な安全性は確認されていないです。

脂質摂取

総脂質摂取量と糖尿病発症リスクとの関係は明らかではないですが、
動物性脂質(飽和脂肪酸)の摂取は糖尿病発症リスクとなります。

脂質が全体エネルギーの25%を超える場合は、
多価不飽和脂肪酸を増やすなど、
脂肪酸の構成に配慮をすること
が推奨されています。

運動療法

運動により使われた筋が糖や遊離脂肪酸の利用を促進させるため、
血糖コントロールの改善・インスリン感受性の増加・脂質代謝の改善、
血圧低下、心肺機能の改善が得られ、糖尿病を改善すると言われています。

2型糖尿病患者に対する有酸素運動と
レジスタンス運動は、ともに単独で血糖コントロールに
有効であり、併用によりさらに効果が高まります。

※ただし病態や禁忌の動きなどある場合もありますので
運動療法を行うにあたり検討する必要があります。

運動療法の目標として、
週に150分かそれ以上、週に3回以上です。

有酸素運動

有酸素運動により、内臓の脂肪細胞が小さくなることで肥満を改善し、
脂肪組織から産生されるアディポサイトカインなどの
インスリンの働きを妨害する物質の分泌が少なくなります。
このため筋肉や肝臓の糖の処理能力が改善し、血糖値が安定します。

有酸素運動の種類としてはウォーキング・ジョギング・水泳などがあります。

有酸素運動では、中等度の運動強度であれば、
週に150分かそれ以上、週に3回以上、行うことが勧められています。

糖尿病患者の糖代謝の改善は運動後12~72時間持続することから、
血糖値を低下改善させるため、運動を実施しない日を
2日間以上続かないように行う
必要があると言われています。

また、歩行運動の場合、1回につき15~30分間、
1日2回、1日の運動量として約10,000歩が適当であるとされています。

運動を実施する時間がない場合でも、日常生活の中で、
通勤時に歩行する、階段を使うなどの
運動を取り入れることも推奨されています。

レジスタンス運動

レジスタンス運動は、筋量の増加が糖の処理能力を
改善させるため、血糖コントロールに有効です。

運動時のエネルギー源として、
血中のブドウ糖(血糖)を使うため、
運動すると血糖が下がり、その効果は翌日まで持続します。

また、定期的に続けることで、
筋肉や脂肪など各組織の細胞がもつ、
ブドウ糖や脂肪をエネルギーに変える能力も一段と高まるため、
その分インスリン量を節約でき、膵臓の負担を軽減できます。

連続しない日程で週に2~3回
レジスタンス運動(筋トレ)の両方を行うことが勧められています。

参考文献

本間研一 . 標準生理学第7版 . 医学書院 , 2011年

糖尿病診療ガイドライン2019
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

この記事を書いた人

アバター画像

TOMOAKI

2021年度JBBFジャパンオープンクラシックフィジーク168cm以下級準優勝など数多くのコンテストで優れた成績を残し続けており、2022年度から正式にmaison de FLEXER所属のパーソナルトレーナーとして指導中。KONDOやKAMEYAMAより常日頃から様々な知識を供給されそれを活かしてオンラインコーチングで月当たり約30名を指導している。