みなさまこんにちは。
パーソナルトレーナーの亀山です。
今回は、懸垂フォームにおける
個人的な最適解を考察していこうと思います。
ちなみに文章は易しくないです。
分かりやすい言葉に変えると語弊を
生む可能性があるからです。
解剖学などの前提知識が無いと
難易度少し高めになるかもしれません。
あと長いです。
お盆の暇つぶしにどうぞご覧ください。
懸垂
ではいつも通り前提条件を整えていきましょう。
前提は”懸垂の対象筋は広背筋である事”。
広背筋が対象筋である以上、
肩甲骨の下制は必須の動作です。
なので動作途中での手関節撓屈、
前腕回内、上腕骨内旋、肩甲骨挙上、
肩甲骨上方回旋などは動作に含んではいけません。
(過去記事参照:トレーニングで見落とされがちな部分その2)
まず、第一に一番多いであろう
足のクロス、膝も曲げ、臀筋にも力を入れた状態であるこのフォーム。
腰椎伸展が入るため、胸椎伸展が上手く出来ず、
肩甲骨下制が上手くいかない。
この時点で、広背筋への負荷が減るのが分かります。
ただ、なぜ初心者に多いか。
それは背中に感覚がありつつ、回数がこなせるからです。
理由については後述しますが、
背面の刺激→懸垂は広背筋の種目→広背筋へ刺激が入っている。
この機序で広背筋だと勘違いすることから
起こり得るのではないかなと思います。
実際に、私の経験上、トレーニング歴が短い人ほど
このフォームに近いように感じました。
では、次のフォームです。
足のクロス、臀筋の力は同じで、
膝の屈曲角度が先程のフォームよりも緩くなった形です。
左が第一のフォーム、右が第二のフォームです。
膝の屈曲が強くなるほど腰椎伸展をしやすくなります。
ただ、経験者に増えるのは右側かなと思います。
これはぶら下がった状態での重心の変化もあり、
広背筋への刺激は右の方が増えるからです。
懸垂では前腕の延長線が
そのまま重心線になります。
第一のフォームでは肩関節と重心線が離れ、
第二のフォームの方が近づきます。
第一のフォームでは状態が反るため、
この重心線に近づける動き、水平外転の動きが増え、
三角筋後部、大円筋、広背筋上部へと
背中の上部側へ負荷がズレていきます。
また、肘関節から身体が離れる事で、
二頭筋の筋活動も増え、
背中の筋群よりも二頭筋が
活動しやすい状況も作り上げてしまいます。
第二のフォームでは水平外転が抑えれるため、
横の動きよりも縦の動きが強くできます。
横の動きは水平外転の動きを指し、
三角筋後部、広背筋上部、大円筋などの動きです。
背面上部に収縮がかかるとそれ以上、
広背筋は動く余地が無くなり、
中部、下部側が動きにくくなります。
なので、縦の動き優位な第二のフォームの方が
より広背筋の下側にに収縮を掛けることが出来、
経験が増えた方々はこちらに行くのではないかなと思います。
この膝の角度における筋活動の変化は、
こちらの論文にも記載されています。
こちらの論文では膝の屈曲がチンニング運動中の
筋の活性化とパフォーマンスに及ぼす影響を検討することを目的とし、
膝を完全に曲げた状態、部分的に曲げた状態、伸ばした状態の
3つの状態を比較したものです。
結論としてコンセントリック期において、
上腕二頭筋は膝を完全に曲げた状態および膝を部分的に曲げた状態と比較して、
膝をまっすぐにした状態で高い筋活動性を記録した。
さらに、膝をまっすぐに伸ばした状態および膝を部分的に曲げた状態での
チンニングのパフォーマンスは、膝を完全に曲げた状態よりも優れていたという結果です。
伸ばし過ぎれば二頭筋、完全に曲げればチンニングパフォーマンスの低下、
部分的に曲げるぐらいがいい。
つまり、先程の第二のフォームに経験者が流れていくのも頷けますね。
では、ここまではよくあるフォームの
大まかな解説だったので、
ここからが本題になります。
そして今回フォームを作る上で私が言いたい事、
”大臀筋に力を入れて胸腰筋膜を介した、
筋膜連結で広背筋を鍛えやすくする”が
間違えであると私は考えています。
”大臀筋に力を入れることで、
胸腰筋膜を介して広背筋が上手く使えるようになる”
”大臀筋に力を入れることで、筋力が上がる”
懸垂の解説においてよく耳にする言葉ですね。
調べてみたらこういったものが出てきましたが、
大臀筋の上肢固定時の広背筋への影響については
文献などが見つけられなかったです。検索能力不足。
筋力などの変化については個人的には分からないので、
”骨”や”筋肉”の状態から考えていきます。
懸垂時、肩甲骨下制を入れた場合、
姿勢を安定させるために、
胸郭と骨盤は逆方向に動きます。
もし、同じ向きに動こうする方居ましたら、
サーカス団に入ることをおすすめします。
左から順に、ぶら下がった状態、
肩甲骨下制後バランスを取った状態、
肩甲骨下制後何故かサーカス団員になった状態。
一番右がおかしいのは一目瞭然です。
重心位置による骨盤の状態変化です。
骨盤が前に移動した場合は、
基本的に後傾します。
この状態で、大臀筋に力を入れるとどうなるか。
大臀筋の作用は股関節の伸展、外旋、
上部繊維は外転、下部繊維は内転です。
大腿骨外旋、外転になるため、
筋活動として強いは上部繊維です。
また、上部繊維はL5多裂筋と連結があるとも言われます。
何かの姿勢に近づきますね。
そうですスウェイバック姿勢です。
これでは骨盤がニュートラルに保てない、
脊柱起立筋、腰椎部分に負荷がかかるなどなど。
エラー姿勢に近づく以上、
筋肉が適切に動けないのは当然ですね。
大臀筋の上部は活動、下部は非活動の時点で
胸腰筋膜の理論は破綻しています。
上腕骨、広背筋から胸腰筋膜を介し、
大臀筋全体から大腿骨。
歩行時の腕と反対の脚が同時に動くのを
想像すると分かりやすいと思います。
つまり、大臀筋内で拮抗させた時点でその連結は上手くいかないです。
というか筋膜って収縮をかけると変わる物なのか謎です。
寧ろ動き悪くするんじゃないですかね。
歩くとき、デッドリフトのときなどもどちらかというと伸張ですし。
では何故、筋力が上がるなどの
考えを持たれるのでしょうか?
それは物理的に軽くなるからです。
腰を反って、骨盤を前方に出すことで、
重心線に近づいた動作を簡単にできるからです。
そもそも懸垂はしんどくなってくると、
腰椎伸展、大臀筋収縮を行う以上、
これは代償動作。
楽に動ける方法として身体が勝手に行う動作である以上、
対象筋を鍛えたい非効率的な動きを目指す、
筋肥大において適切ではないです。
ただ、上がることは出来る。それだけです。
では、ここからは私が考える懸垂の
広背筋を鍛える上での適切なフォームについてまとめていきます。
適切なフォームを考える上で必要な事を上げていきます。
・広背筋が主動筋である。
ただし上部優位にならないこと。
・”広背筋”が可能な限り左右均一に動ける。
・肩甲骨下制が維持できる。
・動作途中で撓屈側に動かない。
・骨盤がニュートラルである。
・反復可能である。
・可動域が確保出来ている。
ぐらいですかね。
そしてこちらになります。
まず、手は撓屈側、親指人差し指で握らないように
小指側MP関節に引っかけます。
前腕回外をすると自然と小指側MPが強くなり、
肩関節外旋動作が入り、肩甲骨面に近づけやすくなります。
次に肩甲骨下制、相対的に胸椎伸展を促し、
頸椎を引くようにします。
頸部の前方偏移、上位頸椎の過伸展からの
肩甲骨挙上を抑える目的もあります。
また、ベンチプレス時の感覚が分かりやすいですが、
胸鎖乳突筋、舌骨下筋群が鎖骨を引っ張る感覚です。
骨盤、大腿骨の意識は無しで、
足はクロスをせずに、足部の外返し運動を小趾から行います。
外返しは足部の背屈、外転、回内の複合的な動きです。
個人的に筋肥大は均一に行いたい以上、
足をクロスするという左右差を作りたくないです。
□で囲った二つを反対から起こすイメージです。
骨盤が後傾して起こる下行性運動連鎖を
足部からの上行性運動で中間に近づけることを目的にしています。
こうすることで、自然と膝が20°~30°程屈曲します。
これで論文の伸ばし切らず曲げ切らずもクリアできていますね。
同時に内転筋付近、肛筋付近に力が入るといいです。
すると骨盤がニュートラルに近づきます。
その状態で後は上がって下がるだけです。
その際に”広背筋に効かせよう”などの意識はいらないです。
むしろ前腕の脱力が必須です。
握りが親指側にズレない、足部の形を変えないなどの
フォームの維持だけです。
形を作っているので意識せずに刺激は入ります。
これが現状考えている懸垂のフォームです。
少し比較してみましょう。
左が私の理想、右が大臀筋に力が入った第二のフォームです。
何となく違いは分かりますかね?
動作するとこんな感じです。
広背筋の緊張が維持できるとブレも抑えれます。
上まで上がっても動作をする肩関節、肘関節以外の
動きを可能な限り抑え込んであります。
ここで次に足すとしたら
下顎関節の安定性、
眼球運動の制限です。
動画途中で顔が動いたのが分かると思いますが、
この動きも無くしたいです。
そうするとこの二つを足すとより、
全体的な安定性が増し、
動作のスムーズになります。
色々順番も作りましたが、
同じような状態、動きにできるなら
何でもいいとも思います。
ちなみにですが、広背筋の筋力かなり要ります。
例えば、普段から肩甲骨下制でストレートバーラットプルを
体重以上でセット組んでやっているぐらいの筋力必須です。
なので初心者向けのフォームではなく、
中、上級者向け。且つ身体のコンディショニングが
出来ている人たち向けのフォームだと思ってください。
ともあき君は余裕でした。
さすが、日本一になると豪語する男です。
まとめ
これが現状、私の考え得る広背筋を鍛える懸垂という種目です。
回数をこなすなどとは別目的なので、
目的毎それぞれに適切なフォームがあるかと思いますが、
筋肥大、可動域を意識してフォームを考えると
このようになるのかなと思います。
ただ、個人的にはこれも正解とは断言できないです。
ここに更に骨格要因が入ってきたりします。
上腕骨の長さ、脊柱の長さなどです。
今後も、知識のアップデートと共に
考えもフォームも変わる可能性があるので、
懸垂の中の1フォームぐらいに思っておいてください。
なので、第二のフォームも完全に
間違えかというとそうでもないです。
第二のフォームの方々は
背面上部の発達が強い傾向にはあるので、
そこを鍛えるためらなありかなと思います。
中部、下部含めた広背筋を鍛えるだと
間違えかなと思っているだけです。
ただ、デメリットは上部ばかり動かしている人は、
中部、下部のフォーム作った瞬間に
一気に重量が落ちるのと、
優位な上部に動きが引っ張られ過ぎて
中部、下部が育てにくくなるかなと思います。
世のマッチョたちに試してもらって感想欲しいですね。
そこから更に突き詰めていきたいです。こんな考察PCに向かって作るより現場でフォーム構築楽しんで筋肉の連動見てる方が圧倒的に楽しい。
過去背中トレ考察ブログ
・高難易度部位である広背筋下部について
・広背筋における個人的疑問
・広背筋の疑問②